第6号の抄録

以下は、雑草研究 57(3) 143-144 (2012) に掲載されたものです。

中国・四国雑草研究会

 

中国四国雑草研究会平成24年度例会,平成24年度公益財団法人日本植物調節剤研究協会近畿中国四国支部研修会平成24年度近畿中国四国農業試験研究推進会議作物生産推進部会問題別研究会は2012724()にメルパルク岡山(岡山市)にて合同開催された。本会では,「雑草管理技術の視点と対象の変遷と展望 -今,何が求められているのか-」を主題とし,以下の講演がおこなわれた。

 

草引きより雑草防除そして雑草管理へ

高橋道彦(元四国学院大学)

1945815日,大東亜戦争終結後GHQは日本の食糧難の解決を重要視し,矢継ぎ早に化学薬剤を日本に持ち込んだ。1950年には除草剤2,4-Dが持ち込まれた。筆者はCIA図書館で35mmマイクロフイルムを閲覧したとき,作物を保護し,雑草を枯らす可能性に言及した記述に強烈なインパクトを受けた。B29の無差別爆撃により城郭を残して全てを破壊する戦術と,強い雑草を枯らし弱い作物を保護する戦略の共通点を真摯に理解した。更に2,4-Dが植物ホルモン系列に属する事を知るに至った。一方,山間部の三椏の栽培地では強害草の発生が稀で害獣が忌避すること,畦畔のヒガンバナが雑草の発生と漏水を防止し,獣類の進入を抑制すること等の多くの観察が蓄積されていた。それらが2,4-Dの出現に伴い,植物同士の相互作用を巧みに利用する発想につながり,雑草管理の基礎に思わぬインパクトを提供し今日に至った。

 

農村環境の変貌とそれに対応した雑草管理及び今後の対応 ― 一個人の農業関係の経歴から眺めた思い ―

冨久保男(日本植物調節剤研究協会近畿中国四国支部)

戦前生まれで物心ついた頃から農業,特に稲作に関わってきた私一個人の見た地元の農村環境の変遷をふり返り,今後の地域農業,自然環境の姿を描きつつ,特に地域の雑草管理や稲作の雑草防除について展望した。昭和20年代までは,全国民が貧しいこともあり,自然循環の中で生活し,農業も行なっていたが,昭和30年前後から化石特に石油の活用による農薬・除草剤と,農機具の開発・普及の恩恵を受けた農業に激変した。そのおかげで現在,稲作は大規模経営が可能で,少数の生産者で米の需要に応えている。しかしその一方で,農村人口は減り,高齢者が増え,地域環境を維持できにくくなっている。しかし,農村部で環境維持が困難になっていることに対する地元民の意識は希薄である。今後は,高齢者や退職者,女性等含めた国民全員参加型農業,自然環境と農業の関わりの摂理に沿った農業,雑草管理が大事で,当面は多様なニーズに応えることになるが,さらには,より好ましい農業,農山村の環境の実現を模索して,雑草管理に対応したい。

 

水稲作雑草防除の新たな課題と今後の研究方向

渡邊寛明(農研機構・中央農業総合研究センター)

我が国の水稲作では,1950年以降は除草剤の普及により雑草防除は大幅な省力化が図られてきた。米生産者の高齢化が進むなか,水田の高生産性を今後も維持するためには,除草剤を活用した省力的な雑草管理の構築が不可欠である。水田の多面的利用,経営規模の拡大や複合化が進められているが,画一的な雑草防除の普及や新たな侵入雑草の増加等により安定した雑草防除が困難になっている場面も多い。特に,除草剤抵抗性雑草や雑草イネは,そのまま放置すれば我が国の水稲作の省力化,低コスト化を進める上で大きな阻害要因となる。近畿中国四国地域でも一部の水稲直播水田において除草剤抵抗性ヒエ等の防除困難な雑草が発生している。我が国にはスルホニルウレア系除草剤抵抗性雑草対策について各研究機関での研究蓄積があり,雑草イネ対策でも他地域での公的研究機関による研究成果がある。本地域の難防除雑草への対策戦略を構築するうえで大いに参考となろう。

 

「生きもの調査」と「田んぼの生きものリスト」から模索する農村植生との関わり方

嶺田拓也(農研機構・農村工学研究所)

人間の居住空間やその周辺から有用となりそうな野生動植物を選抜・育種してきたのが農耕であり,さまざまな生きものに対する“まなざし(観察眼)”が原点にあった。しかし,近年の効率的な食糧生産システム下では生きものとの関わり合いは希薄である。食糧生産の基盤がいまだ農地や農村,生物多様性を含めた地域資源に依存していることを考えると,農の現場に見られる生きものたちとの関係性の再構築も求められるだろう。まず,「田んぼの生きもの」を対象に文献等を網羅したところ,2,035もの種類の植物が水田環境下に出現する可能性が示された。また,地域住民に水田畦畔の植生の豊かさに気付いてもらうために,識別特性なども考慮し「畦の草花調査法」を設計したところ,参加者の畦畔植生に対する関心は高まった。今後はさらに農村植生への理解を深め,豊かな関係性のもと新たな農の可能性を展開するための戦略的プログラムの開発が必要である。

 

講演会には92名の参加があった。なお,講演内容は2012度中刊行予定の中国・四国雑草研究会会報号に集録される予定である。

 

最近の動き

平成29年度例会

(平成29年7月14日)

研究会報第9号の発刊

抄録はこちら。

平成27年度例会

(平成27年7月17日)

平成26年度例会

(平成26年7月16日)

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